オランウータン日誌

保育士をしています。本と落語と自転車が好きです。

コロナ禍での大人の夏休み

少し遅い夏休みを取った。土日を入れて6連休だった。これは盆暮正月以外では、保育士としてはかなり長期の休みの取り方と呼んでいいと思う。 (余談だが、長期休暇が取れないのは、この業界のよくないところだと思う。ただし、僕は「取れない」ではなく「取…

結婚の奴

能町みね子『結婚の奴』を読み終える。能町は、本は何年も前に『お家賃ですけど』を読んだきりで、後輩に教えてもらった久保ミツロウとのYouTube番組「デトックス女子会」を時折聞いてたくらい。気にはなってた『結婚の奴』、同じ後輩に勧められて読んで、と…

グラフィックファシリテーションの教科書

山田夏子『グラフィックファシリテーションの教科書』を読み終える。 グラフィックファシリテーションの教科書作者:山田 夏子かんき出版Amazon グラフィックファシリテーションのテクニック的なところについては、自分の画力で実践できるかはかなり未知数。(…

スマホばかり見てると悲しい

濃厚接触者として経過観察だった期間は、妻とゆっくり会話する時間も取れていなかった。久々に職場まで行けば疲れるし、何を話すわけではないけど、会話がしたかった。 帰宅して食事をとっている間、先に息子とご飯を終えた妻も食卓にいて付き合ってくれた。…

2週間近く隔離されていた

コロナの影響は身近に迫っていた。職場にも陽性者が出て、僕も濃厚接触者ということになって、2週間近く健康観察期間として自宅待機になった。 ワクチン接種が折悪しく重なり、初めの数日間は高熱でうなされた。その後も咳が出続けて不安だったが、検査の結…

ヒトにとって欲望とは? 保育士の考察

欲望の自然性 欲望はヒトが生きていくうえで必須の物であるが、無条件に肯定されるものでもなければ、むやみに否定されるようなものでもない。欲望は根源的には生きていきたいという原動力であるし、生きる上で必要な衣食住を整えようとする力や、人とのつな…

わたしの身体はままならない 〈障害者のリアルに迫るゼミ〉特別講義

『わたしの身体はままならない 〈障害者のリアルに迫るゼミ〉特別講義』を読み終える。 障害の「医学モデル」と「社会モデル」の違いなど、きっと障害者福祉の分野では基本中の基本の考え方なのだろうけど、それが、とおりいっぺんの抽象的な概念としてでは…

梨うまい『悔しみノート』を読む

ラジオが好きだ。 毎日、労働したあとの癒しタイムとして、お風呂にジッパー袋に入れたスマホを持ち込んでradikoを聴く。 ジェーン・スー生活は踊る。人生の酸いも辛いもつまみ食いできる相談コーナーは、束の間のほっこり感を提供してくれる。 その相談コー…

田澤里喜『あそびの中で子どもは育つ』を読む

最近の保育は総力戦だ。発達に即している、という理由でおもちゃを保育環境として用意するだけではなく、本来、子どものおもちゃではないようなものまで、保育の中に取りいれることが、保育の充実につながる。もちろん、単に大人向けのものを横流しすればい…

藤森平司『0・1・2歳の「保育」』

藤森平司『0・1・2歳の「保育」』を読む。0・1・2歳の「保育」 (見守る保育2子ども同士の関係から育つ力)作者:藤森 平司発売日: 2012/08/24メディア: 単行本 小さいひとたちがいる施設で働く者として、赤ちゃんには母親が一番!というような善意の主張を耳…

門井慶喜『銀河鉄道の父』を読む

門井慶喜の『銀河鉄道の父』を読む。 https://www.amazon.co.jp/gp/product/B086STMN46/ref=as_li_tl?ie=UTF8&tag=nafu38-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=B086STMN46&linkId=ea4287a5b2b1c7bd9c44df40b059b2af 自分が父になったから読…

『サピエンス全史』上を読む。

『サピエンス全史』上を読み終える。サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福作者: ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/09/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (49件) を見る なぜ我々はこのような世界に生き…

時間通りに会議が終わっただけで大喜びする

今日は自分のチームの会議があった。それぞれの議題を、提議者が段取りよくまとめていたので、全部の議題が時間通りに終わる。 そんなことはまれなので嬉しい。 では時間通りにいかない場合はどうするのかというと、会議の最後は強制終了の尻切れトンボ。 保…

書くことを再開することにする

書くことを再開することにする。とは言っても、ここ2年くらいは手帳に日々のことや考えていることを記録していたし、仕事でも日常的に文章を書いてはいた。手帳は限られたスペースしかないので、おのずと書く内容はおぼえがき程度のものになる。保育士の仕…

柴崎友香『寝ても覚めても』――モヤモヤたっぷりの良書

柴崎友香『寝ても覚めても』を読む。 寝ても覚めても (河出文庫)作者: 柴崎友香出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2014/05/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る謎の男・麦に出会いたちまち恋に落ちた朝子。だが彼はほどなく姿を消す。三…

恋の始まりのキラキラを、もっと聞きたかった

かわいい女性と話をする。 過去に、好きでもない人と付き合って、その時いかに不毛な時間を過ごしたかを楽しげに話してくれて、盛り上がる。 ――ほんと、ギャラを払ってほしいと思ってた。移動時間も含めて、拘束時間に対して時給1000円はもらいたい! 会…

橋口亮輔「恋人たち」を観る――祈りのような、強く優しいまなざし

オランウータン日誌です、こんにちは。 橋口亮輔監督の映画「恋人たち」を観る。 koibitotachi.com 「多い方と少ない方の少ない方の人間でも自分の生きる世界を好きになろうとしている」*1さまを描いた「ハッシュ!」、人と人とのつながりを決して諦めずに見…

【本の選び方】友だちに勧められた本は最上の出会い

オランウータン日誌です、こんにちは。 新刊、古書を問わず、本屋に足を運んでアンテナを高くしておくと、自然と読みたい本は決まってくるんだけど、おのずと趣味の幅が決まってきてしまいがち。 新たな良書との出会いをもたらす、もっともいい方法は、実は…

【本の選び方】古書店は良質な出会いの場

オランウータン日誌です、こんにちは。 新刊書店は、社会で何が読まれているのかとか、どういうものの考え方があるのかとか、トレンドを把握するために足を運ぶ、というようなことを書いたのだけど、今回は古書店のこと。 一言でいうと、古書店は本との良質…

妻に最低と言われた話――怒りを怒りとして表現する大切さ

オランウータン日誌です、こんにちは。 ふだんは、むやみに不安になるだけなので将来のことを思い詰めないようにしているんだけど、そろそろ来年度のことを考える時期に来ていて、だから、否が応でも考えさせられる。 すると、家でごはんを食べている時など…

短歌に感動できなくなってきてしまった――たとへば君

オランウータン日誌です、こんにちは。 たとえへば君 ガサッと落ち葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか 河野裕子 毎年、この季節になると思い出す歌だ。 恋愛の心情を、「ガサッと落ち葉すくふ」という、おおよそ恋愛とは離れた動作と音に重ねて詠ん…

祖母とチャルメラちゃんぽんを作って食べる――生活のための料理はおいしい

オランウータン日誌です、こんにちは。 前の日に遊びに行くねと連絡しておいて、土曜のお昼前に祖母の家に行く。しばらく世間話をして、そろそろごはんにしようか、という話になる。 「チャルメラのちゃんぽんがあるから、それを作ろうかね。具をたくさん入…

神宮外苑・早稲田・雑司ヶ谷サイクリング――街と街のつながりを実感する楽しさ

オランウータン日誌です、こんにちは。 妻が友だちの結婚式で福岡に飛んでいるので、今日は一人で自転車に乗って出かける。 多摩川沿いから246に折れて、神宮外苑まで延々と進む。神宮のイチョウは今が見ごろ。朝の10時前だというのにけっこう賑わうイチョ…

昔の女と会う男――自分のアイデンティのために相手を利用する、無意識の打算

「昔の恋人を男は名前を付けて保存、女は上書きして保存」という説を支持しているオランウータン日誌です、こんにちは。 というのも、むかし付き合っていた女と会い続ける男が世の中には一定数いるように感じるから。 その男がモテないから、むかし付き合っ…

3つの「夏服を着た女たち」――目の前にある身体と声の力

オランウータン日誌です、こんにちは。 昨日は代田橋のCHUBBYというカフェに、激情コミュニティという劇団の舞台「夏服を着た女たち」を観に行ってきた。原作はアーウィン・ショーの短編小説。 geki-comi.com 夏服を着た女たち (講談社文庫)作者: アーウィン…

【本の選び方】新刊書店は、本棚を眺めるだけでも充分楽しい!

オランウータン日誌です、こんにちは。 orangutan-nisshi.hatenablog.com 友だちに本の選び方について聞かれてふりかえりをしてみたら、思いのほか長くなりそうだったので、いくつかに分けて考えてみる。 今日は新刊を扱う本屋さんの利用方について。 読まれ…

知識を広げる、深める 芋づる式読書

読書の秋ですね、オランウータン日誌です、こんにちは。 先日、いろんなジャンルの本を読んでいるというエントリをアップしたら、どうやって読む本を選んでいるのか、とコメントしてくれた友だちがいて、言われてみればどうやって、と考え込む。 orangutan-n…

この人がいてよかったと思う時――ごはんを作って一緒に食べる話

たまの一人ですごす週末には、つい食事がおろそかに……、カップ麺、納豆ご飯、外に丼物を食べに行く、などなどをしてしまいがちなオランウータン日誌です、こんにちは。 きのう何食べた?(4) (モーニングコミックス)作者: よしながふみ出版社/メーカー: 講…

マキヒロチの「明太フランス」と角田光代の「明太フレンチ」――生きる糧となるごはんの記憶

けっこう漫画も読みます、オランウータン日誌です、こんにちは。 『いつかティファニーで朝食を』の「明太フランス」 いつかティファニーで朝食を 8 (BUNCH COMICS)作者: マキヒロチ出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/11/09メディア: コミックこの商品を…

長嶋有の父親と言葉を交わしたことがあった

雨ですね。オランウータン日誌です、こんにちは。 5年前、当時の僕は短歌にはまってて、休みとなると古本屋に出向いては短歌の本を探していた。 ブックオフにはあまりそういう本は置いていなくって、古本屋というよりは「古書店」といった雰囲気の店のほう…