オランウータン日誌

保育士をしています。本と落語と自転車が好きです。

梨うまい『悔しみノート』を読む

ラジオが好きだ。

 

毎日、労働したあとの癒しタイムとして、お風呂にジッパー袋に入れたスマホを持ち込んでradikoを聴く。

 

ジェーン・スー生活は踊る。人生の酸いも辛いもつまみ食いできる相談コーナーは、束の間のほっこり感を提供してくれる。

 

その相談コーナーから生まれた一冊、『悔しみノート』を読む。

 

 

悔しみノート

悔しみノート

 

 

恥ずかしくて、情けなくて、誰にも言えないけど
誰かに聞いて欲しい言葉って、なんでこんなに刺さるんだろう。
私はもう、こんな風には悔しがれない。
あなたが心底うらやましい。 ――ジェーン・スー

「私は何をどうしたらいいか分からず悩んでいます。いい作品を読んだりしては嫉妬に悶え、でも物作りに挫折して逃げ出した自分にはもう何もできないと落ち込む日々です……」
24歳の秋、役者の夢に挫折し身体を壊し地元に帰った私はこんなメールをラジオのお悩み相談コーナーに送った。
パーソナリティのジェーン・スーさんからの回答はこうだった。
「今日からエンターテインメントで悔しかったやつ全部ノートに書いてとりあえず! 『悔しみノート』の作成を命じる!!」
その日からひたすら、見たもの聴いたものすべてに抱いた悔しみをノートに書きなぐった。その先にきっと何かがあると信じて――『フロリダ・プロジェクト』『あん』『天才はあきらめた』『グレイテスト・ショーマン』『逃げるは恥だが役に立つ』『レディ・バード』『エデンの東』『カメラを止めるな!』ほか、
妬んで、怒って、憧れて……七転八倒、「悔しみ」の大絶叫75編を収録!

紹介されている作品は、知っている作品も知らない作品もあった。たとえ知っている作品でも、解釈に共感したり、深い洞察に唸らされるようなことはなかった。というのは、これは評論集ではなくあくまでも著者の悔しみの記録だから。

 

悔しみを言葉にするのは、きっと辛い作業なのだろうということが伝わってきた。作品紹介の合間に挟まれる、自分のことをつづったコラムに、その辛さが色濃く出ていた。そして、その切実な言葉がとてもよかった。

 

僕は、幸か不幸か切実に表現したいことを持ち合わせていないから共感はしないのだけど、表現したい!という思いを葛藤しながらも、その葛藤とともに伝わってきて、切実さが胸を打つ。

 

そうして、産みの苦しみを味わいながら悔しみを吐き出すことで、著者が前向きになっていくさまも、意図してかせずにかは分からないけど、とてもよかった。著者が今後、どのような仕事をしていくのかは分からないけど、この本は自意識との格闘と、自分の気持ちを言語化することによる再生の記録として優れていると思った。

 

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