オランウータン日誌

保育士をしています。本と落語と自転車が好きです。

結婚の奴

能町みね子『結婚の奴』を読み終える。能町は、本は何年も前に『お家賃ですけど』を読んだきりで、後輩に教えてもらった久保ミツロウとのYouTube番組「デトックス女子会」を時折聞いてたくらい。気にはなってた『結婚の奴』、同じ後輩に勧められて読んで、とてもよかった!

 

 

人生っていい!!

人生って多分いい!

――岡村靖幸(音楽家)

人生を変えるような恋愛だの結婚だのは無理だが、ひとりは嫌だ――

ゲイの男性と「結婚」と称して同居を始め、

恋愛でも友情でもない二人の生活をつくるまでを綴った能町みね子の最新作。

「ウェブ平凡」連載「結婚の追求と私的追究」の単行本化。

 

恋愛を、家族を、結婚を相対化する

能町の「結婚」は、世間の大多数が抱く結婚のイメージとは異なる。恋愛に向いていない人もいるが、それは人とつながっていたい、セックスをしたいということと矛盾しない。

 

家族や結婚から、恋愛を取り除くことによって既存の〈家族〉、〈恋愛〉は相対化される。僕自身は〈家族〉の規範の中で生きてはいるけれど、こうして相対化されると、自分がいま立っている場所や、感じている違和感、規範にそぐわない欲望のカタチが見えるようになる思いがした。

 

雨宮まみとの関係

中盤以降の、雨宮まみとの関係の描写は胸に迫るものがあった。雨宮の著作『女子をこじらせて』を共感を持って読んでいたこともあって、能町の雨宮に対する感情は、僕にとっても切実なものに感じられた。もがいて、もがいて、自分の場所を作れたように見える友人がいなくなるのは、心に大きな穴をあけるのだろう。

 

人と一緒にすごす

能町が、恋愛に見切りをつけつつも、他者と繋がりたいという欲求を持っていることが興味深かった。興味深いというと他人事のようだけど、愛情やセックスを介在させなくても他者とともに暮らすことで人生を豊かにものにしようという試みは、とても意味があるものに感じられる。恋愛をしなくても人は人と一緒にいられるし、誰かとのセックスはもしかしたら楽しい時間になるかもしれない。そんなふうにして誰もが、その人なりのやり方で幸せになろうとできるーー。そんな新たな人間関係の可能性を感じた。