『サピエンス全史』上を読む。
『サピエンス全史』上を読み終える。
- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/09/08
- メディア: 単行本
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なぜ我々はこのような世界に生きているのか?
ホモ・サピエンスの歴史を俯瞰することで
現代世界を鋭く抉る世界的ベストセラー!「歴史と現代世界の最大の問題に取り組んだ書」
──ジャレド・ダイアモンド
保育士をして、幼児という未分化な状態のヒトと日常的に接していると、ヒトという種について思いを巡らす機会が自然と生まれる。
保育は生物学的な意味での「ヒト」を、文化的社会的な「人」へと育てる営みだと考えられるから。
「ヒト」という種の本質を知らなければ、「人」を育てる営みにひずみを生じさせてしまうような気がするのだ。
そんなわけで、『サピエンス全史』を読み始めたのだけれど、僕が期待していた内容よりずっと豊かな広がりを持つ本だ。
ホモサピエンスは、ネアンデルタールに比べて身体能力は劣っていたと考えられる。
だが、言語によって大人数で協力することができたので、あらゆる環境に適応することができた。
言語による、周囲の世界の情報のやり取りだけであれば、人以外の種も行っているが、サピエンスの特筆すべきところは虚構を語ることができ、神話を多人数の集団で共有することができた点だ。
NHKスペシャルの「人類誕生」で見た内容を、より緻密にたどるような認知革命についての議論につづいて、農業革命、帝国主義による人類の統一が語られる。
農業革命は偶然の産物ではあったが、より大きくて複雑な人間集団を形成する地盤を形作る。
農業は狭い土地に多くの人が密集して、効率的に食料を得る術を与え、四季の繰り返しの中での生活は人間の持つ時間の概念を拡大させる。
集団が大きくなるにつれ、官僚的な思考による秩序や、数の概念など、原初の人間には求められてこなかった能力までも必要となる。
そうして、想像上の秩序が複雑に発達していく。
それぞれの地方に発達した文化同士の交流が、貨幣によって可能になる。
力を持った帝国文化が、他のあらゆる文化を併呑して、人類を統一に向かわせる――。
と、こんなところが上巻では語られていて、下巻を読むのが超楽しみ!
ヒトとしての性質が、どんな変遷をへて現在の社会を構成する人につながっているのか、その過程をたどる楽しさを味わえる。
サピエンスの歴史を知ることは、広い意味では、自己覚知を深めることなのだ。