オランウータン日誌

保育士をしています。本と落語と自転車が好きです。

火のないところのセクハラを疑う

「今ちょっと時間いい?」と、園長に別室に呼び出される。


入室してみると、そこには2年目の女性職員が先にいて待っていた。


彼女は僕のチームのメンバーではないし、一緒に担当している仕事もない。


小さな職場のなかでのことだ、別のチームのメンバーとはいえ事務所で顔を合わせるし、日常的に言葉かわしていれば、狩る軽口もたたく。


――この場合、考えられるのは……


悪い予感が頭をよぎる。


知らず知らずのうちに、セクハラをしてしまっていたんだ!


僕は既婚者だから、周りから警戒されていないと思って油断していた。曲がりなりにもジェンダーについては勉強してきたつもりだったけど、僕のほうが歳も立場も上だということに無自覚で、人のプライベートに土足で踏み入っていたのかもしれぬ。そうして、傷つけるようなこと、あるいは性的に不快なことを気づかないうちにしていたんだ!


だって、そうでもない限り、一緒に仕事をしたこともない若手職員と二人で別室に呼び出されることなんかないんじゃないか。


表情には出さないが、内心不安でいっぱいになりながら、園長の言葉を待つ。


――あのな、今度の事例研究の研修、ふたりに担当してほしいんよ。


へ? それだけ?


なんで研修担当の仕事をふるだけなのに別室に呼び出すんだろう。どきどきした。
(とはいえ、もちろんそんなことはおくびにも出さない。もしそんなことが頭をよぎったと知れたら、彼女がそのことを意識してお互いに仕事がしづらくなる可能性があるからだ。僕は円滑に仕事をすすめたいのだ)


ともあれ、悪い話じゃなくてよかった。
事例研究自体はやりがいのある仕事だし、後輩育成にもつながる機会だ、がんばろう。


……とはいえ、自分で自分のセクハラを疑う程度には、僕は日ごろのおこないがよくないのだろう。
別に思い当たるフシがあるわけではないけれど、オッサンに片足を突っ込んでいる年齢でもある以上、いっそう気をつけていかなければならない。