門井慶喜『銀河鉄道の父』を読む
自分が父になったから読んでみようと思ったのだけど、父としての自分以上に、自分の父のことを思った。
父が、僕の結婚式のスピーチで、こんなに小さかったのに……、と語っていたのを思い出した。その時もけっこう感動して、式中に泣きそうになったのだけど、自分が父になった今だと、きっと耐えきれないな。
子を育てることは与えるだけではなく、たくさんのことを与えられることでもある。幼い我が子を看病するときに、自分を見返す真っ直ぐなまなざし。成人してからの賢治はなかなかのダメっぷりを見せて、父・政次郎をヤキモキさせる。父が、息子を抑圧する存在であり、疎まれることも少なくない。政次郎もそのことを感じてはいるが、幼い時から賢治を見つめ続けていた記憶は、政次郎を賢治から引き離さない。
思いだけが先走った誤読になるのを承知で言うと、病に伏せった賢治が政次郎に看病されるのは、賢治なりの父への恩返しのようにすら感じる。それは2人の和解であり、父子関係の結び直しなのだ。
強くあれと求めてくる父も、一人の人とひとして、息子との関係を作りたいと求めている……、そんな当たり前のことを思った。別に無理に話そうとする必要はないけど、困ったことや相談したいこと、話したいと思ったことがあれば、父に話しをしてみよう。頼りない!なんて怒られずに、案外、喜ぶかもしれない。