長嶋有の父親と言葉を交わしたことがあった
雨ですね。オランウータン日誌です、こんにちは。
5年前、当時の僕は短歌にはまってて、休みとなると古本屋に出向いては短歌の本を探していた。
ブックオフにはあまりそういう本は置いていなくって、古本屋というよりは「古書店」といった雰囲気の店のほうが詩歌の本を扱っていることが多かった。
早稲田や西荻窪の古書店街をぶらぶらして、その時住んでいた国分寺を自転車で走っていると、取り立てて特徴のない郊外の通りに、場違いな雰囲気の古道具店があった。覗いてみると、古本も少し扱っている様子。
そこで見つけたのが、サイン入りの穂村弘『短歌という爆弾』だ。
当時はまだ文庫にもなっていなかったし、しかもサイン入りの本が数百円で買えるなんて! と少し興奮して店主と思しき老人のところに持っていく。
――これ探してた本なんです。サインも入ってるんですね。
ひげもじゃのおじいさん、おじいさんらしいゆっくりした口調で何気なく答える。
「これは私が直接もらったものなんだ。ここ何年かで彼もすっかり有名になったねぇ」
――このじいさん何者だ。
そんなことがあったので、5年たった今でもその店のおじいさんのことは覚えてるんだけど、最近読んだ長嶋有の小説の解説を、長嶋康郎という、長嶋有の父親が書いていて、肩書は古道具ニコニコ堂店主。
――古道具ニコニコ堂って……。
さっそく調べてみる。やっぱり、国分寺のあの怪しい古道具店だ。
長嶋と穂村はダメ男を書くのが超うまいという共通点があるだけでなく、同人誌を作ったり、一方がもう一方の本の解説を書いたりしているし、長嶋の小説を読んでいると、友だちを山荘に招いて、父親も一緒に遊んだりしていている。
――あのじいさん、長嶋有の父親だったのか。っていうかもらったサイン本売っちまっていいのか。
5年越しの謎(というのは大げさ)が、たまたま解けて、楽しい気持ち。
以上、オランウータン日誌がお届けしました。
- 作者: 穂村弘
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