オランウータン日誌

保育士をしています。本と落語と自転車が好きです。

忙しいのは積極的に引き受けるけど対価は払ってください

高校生だった時の私の将来の夢は、仕事だけでなく、家庭、地域社会でも活躍できる素敵なハズバンドになることだった。仕事に追われて、「忙しい」が口癖の大人にはなるまいと思っていた。


保育士になった今でも、その思いはだいたい変わっていなくて、私自身が自分の理想とするワークライフバランスを求めつつ、私の仕事が他の人の多様な働き方や生き方を支えることにつながったらいいなぁ、という思いを持っている。


と、ここまでは前置きで、夢を語ることがこのエントリの目的ではない。


何かって言うと、最近ね、仕事が忙しくって、私の慎ましい趣味である本を読むこと、文章を書くこともおぼつかないのです。無念。


仕事があるなら積極的にやるけど……


さっきの話と矛盾するかもしれないけど、「忙しい」こと自体は別にいい。やらなきゃいけない仕事があるならもちろんやるし、そのためなら残業だってする。


納得いかないのは、残業代が出ないってことだ。


「残業代が出ないなんてあたりまえじゃないか、贅沢言うな!」というのは割と保育業界ではまかり通っているんだけど(!)、納得いかないんだよなぁ。


僕の職場は、系列の保育園がいくつかあって、そのうちそもそも残業があるのはうちの園だけで、他の園は定時に帰れている。もし残業するようなことがあっても、必ず残業代をつけている。


じゃあなぜ同じ系列なのに、私の園は残業が日常的に行われているかっていうと、例えば運動会をやります、って時に、去年と同じやり方ではなく、どういうやりかたをするのか一から話し合って作り上げて行くからだ。


それが効率的なやり方だとは思わないんだけど、でも、新しく何かをやろうとする姿勢って大事だと思うし、何かを作りだそうとすることによって生じる大変さは積極的に引き受けようと思うんだ。


何が納得いかないって、残業代が出ない、という一点に尽きる。


ペーペーがピーピー言ってると思われないように


ということで最近、どうやって残業代を出してもらうのか、っていうのを結構現実的に考えてる。いくつかの対策を考えてみた。


  • 残業をしないですむような、効率的なやり方を提案する

先に書いたように、効率的なのが絶対に正しいかというとそうではない。園の方針に異を唱えるなら、じゃあよそでやってください、若手下っ端のペーペーが何を言っているんだ、という話になるだろうなぁ。


  • 公的機関に訴える

労働基準監督署に連絡して、実態を見てもらい、是正を入れる。というのはてっとり早いんだけど、なるべくなら「闘う」みたいなことにはしたくない。管理職をやっつけたって不毛で、職場が混乱して、しわ寄せは子どもたちに行く。そもそも、私は上司たちが嫌いなわけではないので、そんなことはしない方がいい。あと、すごく現実的なことを書くと、仮に労働環境が是正されたとして、その後も長いこと私は働き続けるのだから、なるべく穏健なやり方をとりたい、という思いもある。


これが一番現実的で実行可能。さいわいなことに私の職場は職員組合があって、組織率も高い。系列園の組合役員に相談するのが、今の職場に波風を立てずにできる最善の策なのかと思ってる。


具体的には、まず自分の現状の記録。業務内容と退勤時間を記録しておく。


つぎに、自分だけでなく、同僚保育士の現状をそれとなくリサーチする。周囲の人に、自分と同じ不満を感じている人がいれば、その人と団結して何かするのではなくても、何か行動を起こす上で、私の独りよがりではないと思えて、心の支えにはなると思う。


それらの現状を踏まえた上で、「残業代が出ないのは絶対おかしい!」という闘争のスタンスではなくて、「うちの園はこうなんだけど、それが普通なんですかねぇ?」という軽いノリで相談する。そこで、組合がどういう反応を示すか見てみようと思う。もしかしたら、組合が雇用者と通じ合っているという可能性だってあるわけだから、あくまで軽いノリで反応をうかがうつもりだ。


自分の心を守るためにも


賃金が支払われない残業がたくさんあることについて、「周りの人は文句も言わず我慢してやってるじゃないか」とか、「能力がないから仕事が終わらないだけなんじゃないか」という思いが頭をよぎらないわけじゃないんだ。


でも、そんなのは残業代を支払わない理由には全然ならない。だって、若手で、確かに能力は十分でないかもしれないけど、やらなきゃいけない仕事が残っていてそれをやってるんだから、それには法律に基づいて賃金が支払われて当たり前だ。


その当たり前が、「みんなは我慢しているのに、俺だけがわがままなんじゃないか」とか、「俺の能力がないからじゃないか」みたいな、個人の良心、仕事に対する意識や能力の問題にすり替えられるのは、明らかに間違っている。


繰り返しになるけど、忙しいのは仕方のないことで、積極的に引き受けようと思うんだけど、忙しさに対価が払われないと、自分が何のために働いてるのか分からなくなってきちゃう。それこそ、自分の良心や能力の問題にすり替えて悩むようなことにだってなりかねない。


だから、私は私なりに、お金のためだけじゃなくて、自分の心を守るためにも、出来ることからはじめてみようと思ってる。自分の職場を良くしようとすることって、自分だけじゃなくって、同僚や、広い視野で見れば、社会全体の利益にもつながると思うんだ。



そういえば、素敵なハズバンドになる、というのが夢と書いたけど、現状では相手がいないのでふつうのハズバンドになることすら難しいと気付いた。まずは素敵なワイフを探せるだけの、時間的金銭的体力的余裕が持てるように、やっぱり現状を改善しなくちゃ!