ハネムーンのバリ島で入院した話
オランウータン日誌です、こんにちは。
去年の昨日、結婚式を挙げた。もう一年、早いなぁ。結婚式からちょうど一年と言っても別段特別なことはせず、ふだんどおり。晩ごはんは、豚肉とエノキの柚子胡椒炒め、サンマの塩焼き、煮豆、みそ汁。それにおととい作ったかぶの酢の物。ふだんどおりおいしい。
そうして、結婚式の次の日、去年の今日はハネムーンでバリ島へ出かけたのだった。
ハネムーンは、きっと一生忘れないだろうと思うような体験がいくつもあって、それは未明に山の田舎道でアグン山に昇る朝日を見たり、海辺のレストランで沈む夕日を見ながらとんでもなく辛いごはんを食べたりしたとか、そういう楽しいことばかりではなくって、レストランではクレジットカードを忘れて赤っ恥をかいたし、何より、おなかを壊してバリの病院に入院までしてきてしまったのだった。
素晴らしい夜に響き渡る「悪魔の叫び」
ハネムムーナーへのサービスで、ホテルのレストランでのディナーがついていた。
バリらしい、開放的なつくりのレストランで、南国の夜の外気を感じながら食べるおいしいごはん。流しのおじさんが僕たちをハネムーナーと見て歌ってくれた「ムーン・リバー」。そうして、ホテルの粋な計らいで出してくれたケーキ。
素晴らしい夜だった。
旅行中、僕と妻は、ずっと同じ食事をとっていたんだけど、おなか一杯、と妻はケーキを一口だけで終わりにして、僕はまだまだ食べられそうだったし、せっかくのレストランの厚意、残しては申し訳ないと思い、ほぼ全部僕が食べた。
――なんだか、微妙な味……。特に生クリーム。
そう思ったのが正直な感想だったんだけど、ともあれ、幸せな気持ちで食べ終わる。
おそらくもう一生泊まらないであろう、部屋についているプールで泳いで、本当に素晴らしい夜。
異変は夜中の2時に起こった。
――なんか、酔ったみたい……ちょっとトイレ行ってくるわ……。
しばらくすると、妻曰く「悪魔の叫び」がトイレから聞こえてきたのだという。
読んでいて楽しい話ではないから詳しくは書かないけど、今まで経験したことがないほどの吐感と下痢に襲われて、上から下からの大惨事、呼吸もままならないし、死ぬ思い。
寝ようと思っても寝られず、一時間ごとに起きては、嘔吐下痢を繰り返し朝を迎える。そうして、嘔吐のたびには「悪魔の叫び」をあげていた……らしい、ほとんど自分では記憶がないのだけれど。
迅速かつ的確な対応
僕が異国の夜の底でのたうちまわっている間の妻の行動は、見せてやりたいくらい最高だった。(意識朦朧だったから僕も直接見てないけど)
ホテルのフロントに行って、朝一番に車で病院に送ってもらえる手筈を整え、体温計やスポーツドリンクをもらってくる。旅行保険の内容をインターネットで確認して、保険がキャッシュレスで使えるインターナショナル・ホスピタルを調べる。
朝になったら、病院まで僕を送り届ける。病状をナースや医者に説明。
その日は、帰国する予定の日だったのだけれど、搭乗できる体調ではなくって、チケットのキャンセル。保険会社とやりとり。次の日のチケットをとり直し。
異国の地での非常事態に、右往左往することなく、ヌケ・モレなく行動できるなんて! しかも、全部英語で! なんてできた妻なんだ!
僕は、日本でも入院したことがなかったんだけど、安心してベッドで寝ていられた。もう、この人と一緒にいたらこの先の人生もぜったい大丈夫なんじゃないか。そんな頼もしさすら感じたほどだ。
その上、保険が適応されると分かると病院も取りこぼしがないからか、シャワー、トイレ付きの素敵な個室病室を用意してくれて、一生忘れられない人生初入院。
4泊6日の予定だったハネムーンが、5泊7日と長く楽しめた(?)し、非常事態を(主に妻の力でだけど)ともに乗り切ったことで、夫婦の絆も深まった。
そんなわけで今でも、たぶんこれからも、僕はハネムーンのことをずっと憶えてる。
以上、オランウータン日誌がお届けしました。
ところで、旅行保険に入っていなかったらと思うとゾッとしなくって、莫大な医療費を現地のお金を用意して払うことは容易ではないだろうし、そういう煩雑さとともに、精神的な負担は計り知れない。
海外に行く際は必ず旅行保険に入ったほうがいいというライフハック!