オランウータン日誌

保育士をしています。本と落語と自転車が好きです。

東京‐伊豆 自転車のんびり旅行――気負わなくても遠出はできる!

こころ動かされた本のこと、すっと胸に入ってきた音楽のこと……、文化系の記事を書きたいと思いつつ、自転車やらレジャーやらのことばかりアップしているオランウータン日誌です、こんにちは。


ということで今回も自転車の話。


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(僕たちの自転車 FUJI STRATOS R,TOKYOBIKE 26)


シルバーウィークに、妻と2人で1泊2日の自転車旅行をしてきた。


東京のはずれ町田を起点に伊豆半島の伊東まで、片道125キロを2日間で往復する。数字にしてみると大変そうな道のりだけど、ゆったりのんびり、夫婦で楽しく走ってこられた。


ダイエットがしたいわけでも、ましてやトレーニングでもなく、気持ちのいい道を楽しく走りたい、そんなモチベーションだけで伊東まで走ってきたオランウータン日誌的サイクリング旅行の記録。

計画・準備


シルバーウィークにサイクリング旅行に行きたいという思いは、前回ひとりで横須賀まで走ってきた時から持っていた。


でも、出発の日付を決めたり、ルートを決めたり、宿をとったり、といった具体的な計画を立てたのは旅行の5日前になった。


ものぐさだから計画が遅くなった、というわけではなくって、荒天のなか出かけるのを避けたかったのだ。週間天気を見て、この日なら大丈夫そうだ、という目星をつけてから旅行の日取りを決め、準備を始めた。


海沿いの道を走りたい、自転車屋さんに教えてもらったサイクリングロードを通ってみたい、箱根のようなハードな峠道は避けたい……、などなどを話し合った末、伊東に行くことに決定。伊豆半島を周回したことがある友だちに電話で道の様子を聞いたりしながら、おおまかなルートを考えた。


難儀したのは宿で、さすがシルバーウィーク、宿泊日5日前ともなるとどこも満室で、ほとんど選ぶ余地なく、空いていた民宿を予約する。サイクリングが目的の旅行だから、そこまでの快適さは求めないとはいえ、露天風呂があるような宿で1日走り終えた体をほぐす、なんてこともちょっぴりしたかった。天候を見てから宿を探す以上仕方がないことではあるんだけど。大型連休でない時期なら、直前でももっと選択の余地はあるかもしれない。


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(実際に走った旅程)

境川ゆっくりロード・藤沢大和自転車道


今回の旅の起点は境川だ。


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川沿いを軸にルートを考えると道を間違える心配もなく、しかも快適に走れることが多い。境川は町田から江の島までをつなぐ小さな川だ。住宅街や畑の間を縫って流れていて、歩行者や自転車の遊歩道として整備されているところも多い。


町田駅のほど近くから川に出ることができるんだけど、多摩川沿いの僕の街からそこまで遠い距離でもないので、輪行(自転車を専用のカバンに入れて電車で移動すること)はせずに、自分の足でペダルを漕いで向かうことにする。町田市が多摩丘陵のただなかに位置しているから、自走して町田駅に行くまでにもいくつか急坂を上り下りしなくてはならず、旅のスタート地点にたどり着くまでもひと仕事だ。


朝6時ごろに境川沿いに入ってからは、それまでの殺伐とした道路でのストレスを晴らすかのような、のんびり走れる道になる。逆にいうと、狭いし、歩行者もいるしで、ゆっくりとしか走れないんだけど、散歩中の犬がいたり、美しいカワセミも飛んできたりして、とてものどかだ。


住宅街を抜けて国道246号線をまたぐと、川沿いの道は境川ゆっくりロードから藤沢大和自転車道と名前を変える。景色はだんだんと変わってきて、しばらく行くと一面の田んぼが広がる田園風景の中を走ることになる。


都内から鎌倉・江の島方面に向かうのなら、境川ほど気持ちよくのんびり走っていける道はないかもしれない。もちろん、ある程度以上の速度を出して走りたいのであれば別だけど、快適なスピードで、ところどころで立ち止まって写真なんかを撮りながら行くのであれば、これ以上の道はないと思う。


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(藤沢大和自転車道)

湘南海岸サイクリングロード


藤沢駅近くまでくると境川のサイクリングロードは終わるので、川を離れて少しの間、一般道で海まで向かうことになる。


町田を出てから約2時間半、かなりのんびり走って海に到着。海岸に降りて、持ってきていた朝ごはんを食べ、再び走り出す。


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(湘南海岸自転車道。写ってないけど、ここからは江ノ島も見えた)


小田原方面へ向かう国道134号線と並行して、海岸沿いに湘南海岸サイクリングロードが整備されている。134号は制限速度50キロの3車線道路だが、各車線が広く、ロードバイクでとばしていくなら走りやすい道といえる。僕たちは先を急ぐわけではないのでサイクリングロードを使う。


砂浜のわきに整備された舗装路は、決してロードバイク向けではないが、すぐ横に海を見ながら潮風を受けて走る感覚は、他ではなかなか味わえないんじゃないか。


多くのサーファーが、ボードを積むためのフックが付いた自転車にまたがって、ウェットスーツ姿で走っている。その多くはビーチクルーザータイプの自転車で、街にいるとゴツさばかりが目立つタイヤだが、あちこちに砂が積もる道を難なく走っていて、この土地にふさわしい自転車なのだと分かる。こんな小さな発見をするのも自転車旅行の楽しみだ。


海を眺めながらゆっくり走るサイクリングロードは茅ヶ崎と平塚の市境で終わって、ここからは一般道を行くことになる。


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(湘南海岸自転車道、茅ヶ崎・平塚の市境近く)

国道1号線、太平洋岸自転車道


町田から平塚まで、決して短くはない道のりをサイクリングロードでストレスなく走ってこられた。134号から1号線に入って、小田原まで行く道のりは、途中いくつか橋があって解放感があるものの、特別走りづらいわけでも、走りやすいわけでもない、ふつうの道だ。


大磯町では、太平洋岸自転車道という看板がひっそりと出ていて、またサイクリングロードに入れるのかと期待を膨らませたが、ものの数キロ走ると小さな川の河口にぶつかって一般道に逆戻りした。短いながらもバイパス越しに海を望める気持ちいい道ではあって、夏の終わりの日差しを受けて光る碧の海は美しかった。


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(太平洋岸自転車道)

国道135号


11時過ぎに小田原駅に到着し、無料の休憩所でお茶をごちそうになってしばし休憩。靴を脱いで畳に足を伸ばす。僕も妻も、まだまだ余裕だ。


直進すると箱根という表示を横目で見ながら、国道1号を左に折れ、135号線に入る。


この道を行けば、熱海を越えて伊東に着く。事前に地図で確認すると、ずっと海沿いを走るようだ。気持ちよく走ることができそうだ。期待しながらペダルを踏みこみはじめる。


しばらく走ると、料金所があらわれて、自転車は否応なく海岸線を走るバイパスを見下ろす山道に入らされる。この道も海沿いではあるが、アップダウンが激しく、そのうえ車の交通量が多い割に狭い。1キロ近くにもなる長いトンネルもある。つまり、自転車にはとても危険な道だった。


ところどころ、海のすぐ上の断崖を走るようなところもあり、とても怖いんだけど、ある意味では最高のロケーションを走れる爽快な道でもある。打ち寄せる波しぶきをあびながら走るなんて初めての経験だ。


いくつかの小さな山を越えなくてはならなくて、登りはもちろん辛いんだけど、のぼりがある以上必ずくだりもあって、スピードを上げながらいくつものゆるやかなカーブを走り抜ける心地よさはこの上のないものだ。


とはいえ、やっぱりのんびり走るという目的でふらっと旅行に来た身には、この道はハードルが高かった。妻には登りがつらそうで、多くの道のりを自転車を押して歩いた*1。くだりはくだりでやはり恐ろしくって、海を見渡せる絶景にも自転車を止める余裕もなく、写真も全然撮れなかった。

到着、旅のまとめ


熱海での昼食休憩をはさんで、3時過ぎに伊東に着くころには、心身ともにかなり消耗していて、大げさだけど、命からがらといった気分で宿に入った。お茶を飲んで、お風呂に入って、一息ついたら、知らず知らずのうちにウトウトして、夕食まで寝て過ごす。


翌日も、特別なにかをするでもなく、昨日来たのと同じ道を自転車で走って帰る。同じ道だからと言って退屈ということはなく、むしろ昨日よりも余裕を持って景色を眺めることができて楽しい。


いわゆる観光らしいこともしてないし、体はくたくたになった今回の旅だけど、夫婦ともに満足度はかなり高い。東京から伊豆まで自転車に行くというと、かなりストイックな印象があるかもしれないけど、ぜんぜんそんなことはなくって、終始リラックスして走っていた。


いくらリラックスしていても、2日で250キロも走ればヘトヘトになることには変わりない。でも、ペダルを漕げば遠くに行ける、自分の知らない場所を見ることができる、そんな単純な喜びは何ににも代えがたくって、やっぱりまた自転車で遠くへ行きたいと思ってしまうんだよなぁ。


以上、オランウータン日誌がお届けしました。

*1:妻の名誉のために書くと、復路ではコツをつかんだのか、坂道でも降りることなく登り切っていた