オランウータン日誌

保育士をしています。本と落語と自転車が好きです。

オシャレ本屋にオシャレなライフスタイルを押しつけられるのは嫌だ

毎週末本屋さんに通い、その他にも暇ができれば本屋に行く。本屋が最も有意義な時間つぶしスポットだと信じて疑わないオランウータン日誌です、こんにちは。


本屋といっても最近はいろいろな本屋があるようで、なんだかオシャレな本屋が増え始めている。オシャレ本屋が雑誌などで取り上げ始めたのは、僕の実感としてはここ5年くらいかな。


代官山やら二子玉川やらのオシャレタウンには、有名チェーンによる大型オシャレ本屋もできている。


もちろん本好きの僕はオシャレ本屋にも出かけて行って、どんなところか様子をチェックしている。で、こういうことを言うととっても保守的に聞こえそうなんだけど、僕はオシャレ本屋が苦手だ。


オシャレ本屋は、本の陳列がテーマ別になっていてどこに何の本があるのか分からない、っていうのは些末な問題として、オシャレ本屋の虫が好かない理由を考えてみた。

オシャレなライフスタイルを押しつけないで


オシャレ本屋は、ただ本を売っているのではない。


オシャレな空間で、オシャレな並べ方で本を販売することによって、オシャレなライフスタイルを売っているのだ。


たとえば、手軽に読める小説を探しにオシャレ本屋に行ってみたとする。よくわからない分類の店内を探して、やっと小説の棚に着いてみると、これまたオシャレな仕方で陳列された本たちが、僕たちの生活を彩ってくれそうな紹介文とともに置かれている……。


あるいは、料理の本を探しに行ったとき。ふんだんに平積み、面見せをされて、オシャレな料理本がたくさん並べられている。だが、僕がほしいのはオシャレで難しいごはんの本ではなく、簡単で日持ちのする作り置きのおかずの本だ……。


しかも、料理本の棚の横には、オシャレ料理を作るのに適していそうなオシャレ家電が置いてあったり、園芸の棚の近くにはオシャレ花屋がテナントで入っていたりする。


オシャレ書店に行けば、オシャレな本、オシャレな考え方、オシャレなライフスタイル、オシャレな人生を買うことができて、みーんなおんなじようにオシャレになれる!


でも、本屋に本を買いに行くのって、オシャレになるためなんだっけ?


たとえオシャレじゃなくても、僕は読む本を自分で考えて決めたいし、自分の生活の仕方も自分で選んで決めたい。


いや、すべてを自分で決めるのではなく、自分以外の他者から影響を受けて、よい生活をしていきたい。だが、少なくとも、よく顔の見えないオシャレ本屋には、自分の読む本を教えてほしいとは思わない。オシャレをゴリ押しするのは、本屋の領分からはみ出してしまっているように感じる、というのがオシャレ本屋に対する違和感の核なのだと思う。

オシャレ本屋のオススメ利用方法


とはいえ、オシャレ本屋も利用の仕方によっては楽しい場所だ。

ふだん本を読まない人が読む本を探すとき


ふだん本を読まないから、何を読んでいいのか分からない!そんな人も、オシャレ本屋に行けば、とっつきやすい本が目立つように並べられているので、自分の読みたい本が見つけやすい。

ふだん読んでいるのとは違うジャンルの本を探すとき


本を読むことが習慣になっている人でも、いつもとは違うジャンルの本を読みたいときには、オシャレ本屋は便利かもしれない。ジャンルごとに作られた本棚を眺めていれば、今の流行をひと通り把握することができそうだ。

オシャレで知的な自分に酔いたいとき


皮肉でもなんでもなく、「僕ってば知的でオッシャレ~」という気分に浸りたいときには、オシャレ本屋は最適な場所だ。


せっかくお金を払って本を買うなら気分よく買った方がいいに決まってる。それに、オシャレ気分に後押しされれば、ちょっと背伸びして難しい本を買うきっかけになるかもしれない。

オシャレ本屋オススメの本ばかりを読むのではなく……


本を読むきっかけ、あるジャンルのとっかかりとして、オシャレ本屋は確かに便利がいい。


でも、オシャレ本屋に勧められるままにオシャレ本ばかり読んでいても、隣の誰かとおんなじオシャレさんになるだけだ。


そうなりたい人は、オシャレ本屋オススメのオシャレ本を読み続ければいいと思うんだけど、でも、読む本を自分で選んで決めた方が、もっと読書は楽しくなるし、自分なりの考え方が形作られていくんじゃないか。そんなふうに僕は思ってる。

余談 友だちに本を貸してもらう


自分で本を選ぶだけだと、読むジャンルの本が偏ってしまうというなら、友だちにいい本を教えてもらうと、思わぬ出会いがあって、地に足が着いた世界の広がり方をする。


っていうことを、最近友だちに貸してもらった『泥流地帯』という本を読んで実感。


北海道の貧農に暮らす兄弟が、誠実に暮らして、よりよい生活を送ろうとするも、十勝岳の噴火によって、家族も、畑も、家も、すべて泥津波によって流されてしまう。まっとうに、誠実にあろうとすることは、何の報いも求めずに生きることなのか……。


って言う感じで、まぁ言ったら古くさくって全然スタイリッシュじゃない小説だ。だから、きっとすすめられなければ手に取ることはなかった。でも、読んでみたら、いまの自分に確かに必要な本だったと思う。


そんな具合に、オシャレ本屋に踊らされない読書生活によっても、自分の世界は広げられるんじゃないかって話。


以上、オランウータン日誌がお届けしました。


泥流地帯 (新潮文庫)

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続・泥流地帯 (新潮文庫)

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