オランウータン日誌

保育士をしています。本と落語と自転車が好きです。

保護者と良好なコミュニケーションを築くために重要なことは何か

保護者と良好なコミュニケーションを築くために、前提となる心構えとして、すべての保護者はその人特有の価値観を持っており、その価値観に基づいて子育てをしているということを理解する必要がある。その上で、保育者は子どもに関する専門性をもとに、それぞれの子どもたちの最善の利益になることは何なのかを保護者とともに考え、追求する姿勢を持っていることが良好なコミュニケーションのために必要とされるのである。


価値観の多様化が進む現代社会において、保育所に子どもを預ける事情は各家庭によって異なる。その事情を考慮することなく「子どものためにこうすべきだ」ということを主張したところで、それは価値観の押し付けであり、他人の領域に土足で踏み入ることでしかない。保育者は、それぞれの家庭の持っている価値観や直面している事情を、個別に理解し尊重した上で保護者と接さなければならない。だがそれは、各家庭の価値観にむやみに迎合することではもちろんない。保育者は子どもの最善の利益を追求する、という信念を忘れてはならない。保育者はそれぞれの子どもの発達や、家庭環境も含め、あらゆることを考慮に入れた上で、子どもたちがその時々で最も必要としているものを判断しなければならないということだ。


だとすると、おのずと保護者への対応も単なる「こうするべきだ」というものではなく、各家庭の事情に即した個別的なものになる。たとえば降園の時などに子どもの姿を保護者に伝えることは信頼関係を築くうえで重要な日々のコミュニケーションであるが、その時にも、「その子どもならでは」のエピソードを伝え、それがどのような意味を持つのか、ということまで平易な言葉で説明すると、保護者の安心感は増すだろう。そうなると、保護者の方からも保育所に積極的に悩みを相談しやすくなり、結果として家庭と保育所が協力的に子どもを育てられるようになるという好循環が生まれるのである。


保護者の価値観が多様になる中で、時には対応に困難を感じるようなこともあるかもしれない。だが、私たち保育者のするべきことは明らかだ。子どもたちの最善の利益のために、という信念を忘れずに、自分たちの保育の意味や意義を丁寧に保護者に伝える姿勢を持ち続け、良好なコミュニケーションを築いて、家庭と保育所が協力的に子どもの育ちを支えることを目指すのである。



実はこれは、とある課題で書いた文章。何ていうか、我ながら模範解答っぽくてつまらないとは思うのだが、間違ったことを言っているつもりはないし、先週のエントリ(「保育サービス」の充実は子どもの育ちを支えるのか - オランウータン日誌)とも関連があるかと思って。