採血すると倒れます――原因の考察とその対策
身長180センチ、体重60キロ台中盤、腹囲もノープロブレム、健康状態良好のオランウータン日誌です、こんばんは。
そんなわけで、職場で受けさせてもらえる健康診断も、――昼食を抜く腹ペコ感がつらいくらいで、特に懸念はない。
……なかったんだけど、いざ病院に行って、採血があることを思い出すと、冷や汗をかく思い。思いっていうか、実際に緊張で血圧は上がるし手足には血がめぐらなくなって冷たくなる。
以下、血の話をする。苦手でない方だけどうぞ。
採血が恐い理由
採血の何が怖いって、何よりも血のイメージ!
血のイメージじゃなくって、血そのものは、まだ何とか我慢が出来て、仕事中に子どもが鼻血を出したりケガでけっこうな出血があったりしても、取り乱さずに対処できる。
僕たちの体の中を流れる血が、あのチクンとした針を肌に刺されて、透明で無機質なチューブの中を、赤黒く走っていくさま……。
僕は採血が行われている間は目を強くつむってあさっての方向を見ることにしているから、そんなのは全くの想像でしかないんだけど、でも、書いてるだけで恐い。無理だ。
針だって怖い。
僕という有機的な個体が、冷たく鋭利な針に刺されて無機質な何かにつながれるなんて!
そんなわけで、採血は僕にとって鬼門なのだ。
採血すると倒れます
思い出されるのは、昨年の健康診断での苦い記憶だ。
勝手に頭の中で膨らむイメージに苦しめられ、採血場に行った時には人心地がしていない。
「採血で気分が悪くなることはありますか?」
――緊張ですでに気分が悪いです、ほんと恐いです。間髪入れずに訴える。
「ははは~苦手なんだ。うまくやるから大丈夫よ」
だめだ、伝わってない……。粛々と準備を進めながらおばちゃん採血員は追い打ちをかける。
「あ~、なかなか血管がでないタイプなんだね~こりゃあ採血しづらいわぁ」
バンドをまかれて圧迫された腕に、血がせき止められているような感覚がしているところに、この言葉によって暴走するイメージ。赤くあたたかい血が流れる血管に、その血管に、これから冷たく光る針が刺される!
――ほんと、そういうこというのやめてくださいよ……。そう冗談めかして言いながらも、僕の意識は朦朧としていて、採血が終わっても立ち上がれず、その場でくずおれそうになる。
やってくる屈強そうな男の看護師二人。両肩を支えられてベッドまで運んでもらい、休む。
健康診断後はまた通常業務に戻ることになっていたので、かくかくしかじかの理由で少し遅くなります、と職場に電話する。
そのあと、さんざっぱら笑い者になったのは言うまでもない。
今回の採血対策
採血員に、もっと深刻に苦手である旨を伝えればよかったのだろうか。
いや、けど、深刻になったらよけいに緊張して気分が悪くなることは目に見えている。なるべく明るい態度で採血員に接するのは、人当たりの良さゆえではなく、平静を保つゆえの手段だ。
今回は、あらかじめベッドで寝転んで採血してもらえるようにお願いする、という手を打ってみた。
「採血で気分が悪くなることはありますか?」
――すごく苦手です。とても緊張しているので、ベッドでやっていただけますか?
たぶん、僕のような人は他にも(たくさん?)いるんだろう、じゃあこちらへ、と案内される。
若い採血員、粛々と準備を進めながら、ちいさく「あ~……」と嘆息。
――血管が出づらいのは分かっています、でも、もう何も言わずに、僕があっち向いてるあいだに、知らないうちにチクッと終わらせてください。ごめんなさい、よろしくお願いします……。
若い採血員、苦笑い。
中高生くらいのときは全然大丈夫だったのに、大人になるにつれ、年々ダメになってくるのはなぜだろう。
ダメなものにきちんと打ち手を考えることができるなんて、僕ってば問題解決能力高い! さっすが~! オットナ~! とはなかなか思えず、大人の男としてコンプリートしてない気分になる。
以上、オランウータン日誌がお届けしました。
そういえば冷静になって考えてみると、採血はチューブ使わないですね……、もう何年も採血の時に目をそらし続けているから分からなかった……。