DVDを返し忘れた。髪はママに切ってもらったわけではなかった。
DVDを返し忘れて延滞料を払う。
返し「忘れた」わけではなかった。新作だったので、レンタル日数が短くて当日返却で借りた。次の営業日の開店前までに返せばいいので、出勤前に返しに行こうと思っていた。絶対に忘れないように、玄関ドアにマグネットで不織布バッグをつるしておいた。
駅までの出勤ルートを、ちょっとだけ遠回りしてツタヤの前を通るように出発した。開店前のツタヤについて初めて、手に持っているのがツタヤの不織布バッグではなく、エコバッグだと気づいた。
原因は明白だった。
普段はリュックで手ぶらなのに、保育園の製作で使うために、肉や魚の食品トレイや梱包材のエアーパッキン、通称プチプチを詰め込んだエコバッグを手に持っていたから、それに気をとられていたのだ。
一つのことに気を取られると、もう一つのことを忘れる。
無念だ。
仕事から帰って、靴を脱ぐ間もなく玄関ドアにかかるツタヤバッグを手に持って返却に行く。延滞料金は334円だった。
木曜の祝日、金曜は有給、土日も休みと連休明けで久々の職場、着くなりたくさんの子どもに「髪切ったの?」と聞かれる。
ある2歳の男の子は「誰に切ってもらったの?」と聞いてくる。
――うーんと……。(何て答えようかな……美容師さんって言って、この子に分かるかなぁ……)
一瞬の間に、その子は「お母さんに切ってもらったの?!」
実家に帰って、お風呂場でローブをつけてシャンプーハットかなんかをかぶって、大の男がママに髪を切ってもらっていたら気持ち悪いよ。
4日ぶりの仕事は楽しかった。