オランウータン日誌

保育士をしています。本と落語と自転車が好きです。

どんな解釈も受け容れてくれるのが芸術のかっこいいところ!

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高校生だった時にジョン・レノンの「Starting Over」という曲を聴いていっぺんに好きになって、でも早口の英語が何言ってるのか全然わからなかったから、自分で歌詞を引っ張ってきて見比べながら、何度もCDをリピートした。



(Just Like) Starting Over - John Lennon - YouTube


ジョン・レノン最後のアルバムに収められたこの曲はあまりに有名だと思うんだけど、高校生だった僕は、ジョンとヨーコのような大人の男女が何年も生活を共にして関係を育んできた後で、「Starting Over(再出発)」しようとすることや、一人と一人としていながら二人でいることに、ちょっとびっくりした。大人になったら、いつかきっとこんな恋愛をするようになるのかな、なんて思ったものだ。

Our life together is so precious together
We have grown,we have grown
Although our love is still special
Let's take a chance and fly away somewhere alone


新しく恋愛を始めたときや、恋愛をしている最中に、この曲を聴きたくなる。そんな風にしてこの曲と付き合ってきたんだけど、最近になって、もしかして僕はずっとこの曲を誤読していたんじゃないか、とも思うようになった。「Let's take a chance and fly away somewhere alone」というところで、ラブ・ソングとして素直に読めば、「二人っきりでどこかへ旅に出よう」ってくらいの意味になるのかも知れないけど、僕はずっと「alone」を「一人きりで」だと思ってて、「僕たちの愛はかけがえのないものだけど、(それぞれ)一人きりで旅に出ようよ」、そう解釈していた。

Why don't we take off alone
Take a trip somewhere far, far away
We'll be together all alone again
Like we used to in the early days
Well, well darling


「alone」の語法をよく理解してないってことと、僕の思い込みの激しさのなせる業なのだろうけど、でも、やっぱり「alone」は「一人きりで」と解釈した方が僕にはしっくりくる。


どんなに思い合っていても、私は私の、あなたはあなたの人生を生きなければならなくって、それは寂しいことでも何でもなく、それぞれの旅路でいつか再び、引き合わせられる時が来るということ。あるいは、私とあなたが自分の生を全うしながら、それでも二人で一緒にいることのかけがえのなさが歌われている――。


音楽をはじめとした芸術作品に、「正解」の解釈なんてないことは言うまでもない。英語ができなくても、音楽についてよく知らなくても、受け取る側に色んなことを感じたり考えさせたりして、その感じ考えたことすべてを受け容れてくれる、そんな懐の深さが、芸術のかっこいいところなのだ。