私はこの道を見たことがないけれど世界が素晴らしいことは感じられる
私は馬車に乗ったことがない。アカシアがどんな花なのかも知らない。白い時計台を見たこともない。
いったい、日本でふつうに生活している人のうち、どれくらいの人がこれらすべてを見知っているのだろうか。
それでも、私はこれらのものがきっと美しいだろうということを感じるし、あるいは実際に体験したかのように、これらのものがある情景を思い浮かべることができる。
「この道」という曲に感動した
GWに音楽を聴きに行った。
私は音楽に詳しくないので、全体としては、やっぱり音楽っていいなぁ、歌の力って素敵だよなぁ、という感想しか書くことが出来ないのだけど、「この道」という曲をカウンターテナーの男性が歌っていて、とても感動した。
(参考までに。このリンクはソプラノですが)
この道(北原白秋・詞、山田耕筰・曲)ソプラノ:鮫島有美子 - YouTube
この道はいつか来た道
ああ そうだよ
あかしやの花が咲いてる
あの丘はいつか見た丘
ああ そうだよ
ほら 白い時計台だよ
この道はいつか来た道
ああ そうだよ
お母さまと馬車で行ったよ
あの雲もいつか見た雲
ああ そうだよ
山査子(さんざし)の枝も垂れてる
歌詞のなかに書かれているのは、あかしやの花とか、馬車とか、白い時計台とか、分かりやすくブルジョア的で、メルヘンで、ふつうの勤め人の家庭でふつうに育った私には無縁の世界だ。
にもかかわらず私がこの曲に心動かされるのは、――もちろんメロディの力と確かな歌唱力によるところは大きいのだろうけど、この歌で表現されている世界が、私の心の柔らかい部分に、いうならば、自分は愛されて、大切にされていたんだという無意識的な記憶に触れてくるからなのではないか。
世界って素晴らしい!
私はたぶん幸せな子ども時代を送ってきたんじゃないかと、いま現在実家の家族の様子を見ていると推測されるんだけど、もし、幸せな子ども時代を送れなかったとしても、その幸せを追体験できるのが歌や言葉のかっこいいところだ。
幸せないまを送っている子どもには、その幸せな記憶を残しておくために、もし幸せでないいまをがんばっている子どもがいたら、幸せな世界があるということが心の支えになるように、世界の素晴らしい部分を伝えられる大人であれたらいいなぁと、「この道」を聴いて思った。(これを書いてて思い出したんだけど、映画「ライフ・イズ・ビューティフル」のおとうさんって超かっこいい大人だ)
そういえば、音楽を聴きに行った晩に会った友だちに、その音楽会の感想を話したら、絵本出版社の編集人が言っていたという言葉を教えてくれて、そうそう、それが俺が保育士になろうと思った理由なんだよ!と手を叩いて喜んだ。うろ覚えで、都合よく歪曲されているかもしれないけど、あえて書いておく。
「絵本の使命は、世界は素晴らしいんだよって子どもに教えてあげることなんだよ」
***
みなさま、よいGWをお過ごしください。
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